浄水器は本当に必要なのか?!非常時対応(防災・飲料水の確保)の視点も含めて検証してみました。
近年、新築住宅(建売戸建て住宅、マンション)の大半に常設されるようになってきたのが、”浄水器内蔵型水栓”です。
蛇口に中に、浄水フィルター(カートリッジ)を設置することが出来る水栓。浄水器には、多様性があって、その機能性にも機器によって大きな違いがありますが、蛇口内蔵型の浄水器は、最も機能的にシンプルなものとなっています。
ただ、そんな住宅の常設設備機器となりつつある”浄水器(水栓内蔵型)”は本当に効果的なアイテムなのでしょうか?
一級建築士としての見解を加えた上で、結論を先にお話してしまうと、一般家庭に浄水器は不要と私は考えています。
そこには、どんな理由があるのか・・。ちょっとしたデータを交えてお話してみたいと思います。
一般家庭に”浄水器”は必要なのか?
まずは蛇口内蔵型浄水器の概要・機能性を確認してみましょう。
”浄水器”の必要性・有効性に関して、検証する前にまずは、「蛇口内蔵型浄水器」がどういうものなのか?・・どのような性能・特性を有しているのか?を確認しておきたいと思います。
浄水器内蔵型水栓が付いていることは知っていても、案外、その性能や特性に関しては、詳しいことを知らない人が多いものですからね。
”浄水器内蔵型水栓”にも、いろいろ種類があって、そこで使用できる浄水フィルター・カートリッジにも形状・機能が異なったものが存在しています。
写真のようなものが”浄水カートリッジ”と呼ばれているもの。
この浄水カートリッジ(フィルター)を水栓の中に設置すると浄水機能が発揮されることとなるわけです。
まあ・・あまり、細かな話をしてしまうと・・混乱してしまいやすいので、ここでは単純に、浄水器内蔵型水栓で使用することが出来る「浄水フィルター・カートリッジの種類」について、お話してみたいと思います。
特性・機能性な視点で考えると、下記3種類の浄水カートリッジが存在しています。
1)標準性能タイプ(浄水カートリッジ)
標準的に備えられているのが、この標準性能タイプの浄水カートリッジです。浄水カートリッジの機能性は、「どんな要素を除去することができるか」が主要な要素となっています。
標準性能タイプの浄水カートリッジにて除去できるのは、下記4種類の要素のみとなります。
いかがですか?案外、除去できる要素が少ないことがわかっていただけるのではないでしょうかね。
まあ、もともと日本の水道水の品質はとても高いので、通常時には、「遊離残留塩素」と「カビ臭」が含まれていることがある程度ののことかと思いますので、基本的には、これでも十分と考えることも出来るのかもしれませんけどね。
2)高除去性能タイプ(浄水カートリッジ)
標準性能タイプの機能性に、「発がん物質として指定されている複数の要素を除去できる」ような機能性を持たせたのが、こちらの高除去性能タイプの浄水カートリッジとなります。
計12種類の物質を除去することが可能となっています。
いろいろな化学物質の名称が記されていますが、いずれも塩素消毒などの過程において、生成される可能性がある物質。ただし、日本の水道水においては、それぞれ厳しい基準(含有量限度値)が設定されており、基準値以下の含有量となっています。
3)にごり・鉛除去タイプ(浄水カートリッジ)
標準性能タイプに対して、「にごり」や「金属成分」の除去機能を有したのが”にごり・鉛除去タイプ”となります。
計9種類の物質の除去が可能となっています。
水道管設備の経年劣化への対処のための浄水機能となっています。
水道設備(給水管・配水管)の現状を確認しておきましょう。
次の水道設備(給水管・配水管)の現状を確認しておきたいと思います。
基本的な水道水が各家庭に送り届けられるルートが下記です。
水道管には、「配水管」と「給水管」の2種類が存在しています。あまり、この区別を知っている方は少ないかもしれませんね。
配水場から各住宅の敷地内にまで、水を運ぶ太い水道管が「配水管」。敷地内から住宅内部を巡って、各給水設備(蛇口など)まで水を運んでいるのが「給水管」となります。
昔は、”給水管”にも金属管(鉄管・鉛管)が使用されていましたが、近年では、樹脂を活用した各種給水管(ポリエチレン管・HIVP管・ライニング鋼管・耐火二層管など)が使用されるようになっています。
ゆえに、近年の住宅設備(新しい住宅)において、給水管内での錆の発生などはありません。(給水管内部の腐食による錆は無いという意味です。)
配水管に関しても、錆の発生の無い樹脂系配管が使用されるようになっているのですが・・。日本の配水管設備は、まだまだ補修・切り替えが進んでいない状況なんですね。
金属管が使用されているエリアも少なくないのです。ですから、配水管内部に大量の錆が発生している区域も存在しているのが実情です。
給水管においても、古い団地やマンション・古い住宅地などでは、いまだに金属管が使われている住宅も多々存在しています。
私は仕事柄、建物の改修工事などの現場にて、内部が錆に覆われた給水管・配水管を目にする機会があるのですが・・。
そういう状況を多々目にしていると・・水道水自体は、とても良質であることはわかっているんですけどね。
どうしても、感覚的に、飲み水として使用する気にはならなかったりするんですよねぇ。一種の職業病なのかもしれません。(苦笑)
新築から5年~8年程度の住宅においては、物理的に浄水器は必要としないものと考えています。
ここから、”浄水器の必要性”に関する検証となります。
まあ、すでに流れの中で答えを記しているのですが、通常時において、物理的な作用の側面から考え、少なくとも新築から5年~8年程度の住宅においては、浄水器は必要としないことがわかります。それは、それらの住宅では、すでに錆が生じるような給水管は使用されていないからです。
通常時は、水道水の品質は、高いレベルで保たれているもの。何か、自然災害やトラブルなどが生じない限り、健康被害に繋がるような物質量は、水道水に含まれることはありません。
ゆえに、「錆・汚れ」「化学物質」への対応の両面から浄水器を必要としないことがわかります。
ただ、その地域的に配水管設備が古いことがわかっている状況では、「錆・汚れの混入」に関する対処として、浄水器が機能を発揮する場面が存在するものと思われます。
併せて読みたい”浄水器”関連情報
水道水を湧き水のような美味しさに!
今までの家庭用浄水器とは、大きく異なる新機能住宅設備ウォータースタンドが登場しました。単なる”浄水”ではなく水道水を”湧き水の美味しさ”にと生まれ変わらせてくれます。ウォーターサーバーの機能を持ちつつも、”水の購入は不要”の新世代設備に。
飲料水を”費用”及び”非常時対応(防災)”の視点から比較検証してみました。
飲料水の種類と費用の比較!
一般家庭で、飲料水を確保する方法には、下記3種類の方法が存在しています。
2.天然水ペットボトル
3.水道水+浄水器
基本的に「浄水器は必要なのか?」を検証することを目的としていますので、”水道水”に関しては、「水道水+浄水器(蛇口内蔵型浄水器)」を対象としています。
また、費用比較をする上では、「24L/一ヶ月」の天然水(ミネラルウォーター)を使用した場合を前提としてデータを算出してみました。
1.ウォーターサーバーの活用
近年、2011年福島原発事故の発生をひとつのきっかけとして、一般家庭においても、活用する方が増えているのが「ウォーターサーバー」です。
現在の家庭用ウォーターサーバーは、”飲料水(冷水)”の供給だけではなくて、”飲料用のお湯(熱湯)”の供給機能を有しているものが大半です。
”電気ポット”の機能を併せ持っているわけですね。ゆえに、シビアに考えれば、電気ポットに替わるアイテムとしての、費用対効果も加味するべきものだと思っています。
ただ、それをすると比較が複雑となってしまいますので、まずは単純に「飲料水としての利用」の費用を算出してみたいと思います。
比較対象として選んだウォーターサーバーがこちらの「コスモウォーター」です。もっと安値のウォーターサーバーも存在していますが、毎年常に人気上位となっているものから、安値のサービースと言えるものを選出しました。
ちなみに、こちらのネイフィールウォーターもサービス内容(天然水の種類、サーバーデザインなど)がほぼ同じです。(何故、まったく同じなのでしょうね。まあ、提供している会社が異なるというだけかと思います。)
後ほど”防災”に関する要素でも、触れたいと思いますが、ウォーターサーバーを利用するのであれば、かならず複数の天然水産地を有しているものであることを必須条件とするべきと考えています。
ちなみにコスモウォーターは、異なる水源域となる、富士の銘水(静岡)・日田の天然水(大分)・奥京都の天然水(京都)の3種類をラインナップに揃えています。
ウォーターサーバーは、「機器(サーバー本体)は無料(レンタル)」となっているものが大半です。コスモウォーターも機器本体は無料。費用対象となるのが「天然水購入費」と「電気代」となります。
地域や内容によって、費用差がありますが、私が妥当と思える代表的な費用を算出したのが下記となります。
※天然水:¥4,104円(12L×2本)。最安値だと、¥3,800円。
*電気代:¥400円/月。エコモデル(通常1ヶ月1,000円、電気代約60%カット)で計算 。
ウォーターサーバーの場合、この「¥4,504円/月」という価格にて、本来はコーヒーや紅茶・緑茶を飲むためのお湯(飲料)も確保することができることになるわけです。
ペットボトル水や水道水の場合は、”お湯を沸かすための費用(電気代、ガス代)”を加算しなければいけないわけです。シビアに言えば。
2.天然水ペットボトルの購入。
最も多くの方が手軽に活用しているのが、「天然水ペットボトル(ミネラルウォーター)」ではないでしょうか。
年々右肩上がりで消費量が増加しています。
このミネラルウォーターも2011年東日本大震災(地震と津波)をひとつのきっかけとして、さらに需要が高まることとなりました。
なんといっても、関東周辺の方は、記憶も新しいものかと思いますが、2011年の震災及び福島原発事故後、しばらくの間、ミネラルウォーターがなかなか手に入らない時期がありましたよね。
そんな2011年に、ミネラルウォーターの一人当たりの一年間消費量が「24.6L」へと拡大することとなりました。その後も、需要は伸びており、2016年の統計では一人当たりの一年間消費量が「27.8L」にも増加しています。
ミネラルウォーターの中でも天然水は大人気アイテム。費用比較をする上で、毎年人気上位をキープし続けている、こちらサントリー 天然水(南アルプス) 2L ×6本を対象としてみました。(私のが愛飲している天然水でもありますので。)
通信販売にて購入できるものを対象として、安値を調べてみると下記となります。この場合、費用対象となるのが「商品価格(税込み)」と「送料」です。
単価としては、もう少し安価なものもありますが、送料を加味した場合、上記が最安値に近い価格となりそうです。
3.水道水+浄水器(蛇口内蔵型浄水器)の利用。
最後に、「水道水+浄水器(蛇口内蔵型浄水器)」の費用を算出してみたいと思います。
水道水に関しても、”水道料金”として費用は発生していますが・・。また、単価換算すると、わずかなもの。(3Lで約1円程度)ゆえに、水道水の価格は無視して、”蛇口内蔵型浄水器のメンテナンス費用”を対象としたいと思います。
浄水器は、とても機能差が大きく、高機能なものほどとても高価なアイテムとなります。その中でも蛇口内蔵型浄水器は最も安価な部類に属するもの。使い方によりますが、基本的に、浄水カートリッジを「3ヶ月に一回程度」交換する必要があります。
浄水カートリッジを適切に交換して使用しないと、内部に雑菌が増殖してしまい、通常の水道水よりも品質が悪化した水となってしまいますので、本末転倒なこととなりますので、ご注意を。
ここでは、浄水カートリッジの価格を記してみたいと思います。こちらも商品によって、価格差がありますが、同じメーカーのもので比較掲載しています。
*高除去性能タイプの浄水カートリッジ:¥3,996円(税込み))。
*にごり・鉛除去タイプの浄水カートリッジ:¥4,644円(税込み)。
本来は、”錆などの成分除去”が現実的に重要な要素となることを考えると、「にごり・鉛除去タイプ」を使用することが望ましいわけでずか、とりあえず、中間価格帯となる「高除去性能タイプ」を基準として、一ヶ月の費用を算出してみると下記となります。
最低限、上記費用がかかるということで理解していただければと思います。
”費用対効果”的には、「天然水ミネラルウォーターの購入」が最上位に!
あらためて、飲料水の一ヶ月間の費用を並べて記してみると下記となります。
2.サントリー 天然水(南アルプス) 2L ×6本×2箱(計24L):¥1,306円(送料無料)
3.高除去性能タイプの浄水カートリッジ:¥1,332円(税込み)/月。
いかがですか。単純に費用を比較してみただけですが、なんと「水道水+浄水器」よりも、「天然水ミネラルウォーター」の方が、安価で利用できる可能性があることがわかります。
ここで比較した浄水器は”蛇口内蔵型浄水器”で、浄水機能としては、低めの商品で、この結果です。何かトラブルが生じたり(水道水の汚染など)した時には、浄水器では対処できない状況になることを考えると・・通常時にて浄水器(簡易)を利用するのは、効率的ではないことがわかっていただけるのではないでしょうか。
どう考えても、「天然ミネラルウォーターの購入」が最も単純な飲料水としての費用対効果は一番高く、そしてリスクが無いのですから。
非常時対応(防災)の要素を加味して検証してみましょう。
飲料水を確保する手段が絶たれてしまう、直接的な要素となるのが
*上水道設備(インフラ)の遮断
の2要素です。
それらを招く要素となるのが、各種自然現象(大地震、噴火活動、洪水、豪雨浸水など)と人的トラブル(停電、機器故障など)となります。
近年、地震活動や火山活動・洪水被害などが増大している・・と取り上げられていますが、実は、インターネットの普及&IC制御の普及に伴い、人的トラブルの影響が拡大してきているのです。
先日も、JR東日本にて、たった一か所の変電所での人的ミス(機器の故障などではなく、完全な人災と呼べるもの)によって、大規模な停電被害が発生しています。自然災害と等しく、人的トラブルによる”飲料水への影響”も今後、拡大してくものと考えられるのです。
そんな飲料水の確保が絶たれてしまう要素の中で「物流の遮断」により影響を受けるのが、『ウォーターサーバー』と『ミネラルウォーター』です。
そして、「上水道設備の遮断」により影響を受けるのが『水道水+浄水器』となるわけです。
ここで、非常時対策の必須要素ともなるのが、「異なる2つ以上の対策を有しておく」ということ。
飲料水に関しては、少なくとも、”物流の遮断”の影響を受けない「水道水」と”上水道設備の遮断”の影響を受けない「ウォーターサーバー」or「ミネラルウォーター」のいずれかを日常的に確保しておくことが大切なポイントとなるわけです。
そう・・。基本的には、「水道水」は大半の人が有しているもの。その上で、「ウォーターサーバー」もしくは「ミネラルウォーター」を常備しておくことが非常時対策として有効な手段となるんですね。
であるならば・・。水道水に対して、わざわざ費用をかけて、”浄水器を設置する”ことに、意味が無いと思いませんか?!飲料水の安全性(非常時の)に関しては、確率的に「ウォーターサーバー」及び「ミネラルウォーター」の方が高いわけですから。
現状の水道水に対して、わざわざ”安全性のために費用を負担する”必要は無いのです。私は、そう思うんですよね。(一時、放射性物質が広まっている最中には、いろいろ検証はしましたけどね。でも、そのことに関しても最終結論としては、蒸留水器の方が効果的であることに至りましたので。)
私は経験的に、都市部・住宅市街地では、非常時(自然現象・人的トラブル)に最も大切となるのが、「飲料水の確保」と「トイレの確保」だと確信しています。
「食料」「電気が使えない」「ガスが使えない」という要素は、なんとかなるものです。
それよりも、家族の人数分の必須要素となるのが「飲料水の確保」と「トイレの確保」なんです。トイレの課題に関しては、別にこちらの記事でも記していますので、ご参照いただければと思います。
ちなみに、私は、ウォーターサーバーとミネラルウォーターを飲料水として両方活用しています。ウォーターサーバーとミネラルウォーターでは、物流経路(方法)がそれぞれ異なっていますので、何か非常事態が発生したときにでも、どちらかは機能できる可能性があるからなんですね。
それと、日常的に紅茶&緑茶(もちろんホット)を飲むことが多いので、結局いろいろ試算してみたら、電気ポットを使用するよりも、メンテナンスなども含めて、ウォーターサーバーのみで対応したほうが、費用対効果が高かったからなんです。